残る自分の歯を磨こう

残っている自分の歯、天然の歯を丹念に手入れをする事。それが何十万円とする入歯を長持ちさせるコツです。しかし、入歯は手入れ不要と誤解されている方は少なからずいるのです。それはとんでもない事です。

総入歯と部分入歯では、手入れ法が基本t的に異なる為、別々に述べましょう。

まず部分入歯は、2~3本からほとんど総義歯に近い大きな物まで大小さまざまあります。しかし、天然の歯につかまって維持される為に、つかまられている歯の負担というのはその分大きくなります。バネをかけた歯が抜けてしまい、仕方なくバネをつける歯を移動したら今度はその歯がまた抜けてしまう。そんな患者さんもしばしばいます。

自分の歯は、食べ物の「味」の観点から観ても非常に重要なものだと言えます。噛んだ時の感触が歯の表面から歯根、あごの骨へと伝わっていきます。文字通り、「味を噛みしめている」のです。

歯根の近くに、噛んだ時の感触を感知する神経の先端が存在しています。プロプリオセプターと言います。総入歯になってしまってから味が分からなくなったという嘆きの原因はここにあります。

部分入歯の人も、噛む時は自分の残存歯を多用しています。噛みやすく、尚且つ味もおいしさを感じられるからです。従って、残存歯にはつかまらせている力の他に、噛む力も余分にかかっているという事が言えるでしょう。

入歯を長持ちさせる為には、全部の歯が自分自身の天然の歯だった時の2倍も3倍も時間をかけて、丁寧に磨いてあげる必要があると言えるでしょう。自分の歯が全部なくなってしまい、美味しい物を美味しいと感じられなくなるのは嫌ですよね。

まだ遅くはないかもしれません。自分の歯は大切にしましょう。そのためにはブラッシングが重要です。まずは自分に合う歯ブラシを選びましょう。

総入歯は流行りではない

学問にも流行りというものが存在します。総入歯は、今どちらかと言えば流行から外れていると考えられます。そのかわり、技術は確立している分野であるとも言えます。だから、上手で熱心な入歯を専門としている先生は、無論例外はあるでしょうが、前述した流行に従って中年以上の歯科医に多くみられるように思われるのです。

今回は参考までに、入歯の上手な先生方の診療が実際にどんなものなのか触れていきたいと思います。

まずもって、患者さんの話をよく聞いてくれる方。そして必ず、使用してきた入歯をしっかりと見てくれます。今までの入歯の何が合わなかったのか原因を探す為には大変重要な事だと言えますから。

加えて、「何年前に作成したものなのか」「今どんな状態なのか」などの質問も行います。このような丁寧な問診を行って、漸く口内を診るのです。観察だけでなく、指で押したり触ったりして確認します。憶測や目視のみの情報で判断するのではなく、可能な限り情報を集めた上で診断・処置を行ってくれるという事ですね。

場合によっては、その日に新たな型を作らないという事もあるかもしれません。古い入歯を使って、傷んだ顎を治すような改善策も模索してくれるかもしれません。或いは、とりあえず仮義歯を作り、本当の義歯はじっくりと作っていくという事もあります。

入歯であるが為に、不適切な噛み癖が付いているというケースもあるからです。その為、正常な噛み方を訓練する目的で治療用義歯を入れるという事も有るのです。治療用義歯を作ってくれたら、腕前は間違いないという裏付けだと言えるかもしれません。

どんな治療が適切なのか?

患者さんの口の状態によって、処置は変わってくるものです。状態によっては、その日に本番の入歯の型をとる事だってあるでしょう。

いずれにしても、1回型をとったとします。この時、金属の採型具を用いるのが一般的です。でも、これですぐ入歯は作りません。1回目の採型の次の時に、もう1度型をとり直します。これは別に失敗したというわけではありません。精密な型は1度ではとれないのです。

初めにとった型で石膏の歯の模型を作成します。これをスタディモデルと呼びます。その模型で検討して、模型に合わせてプラスチックでその患者さん個人用の採型具を作ります。

寸法や形状がその患者さんの口に合ったものです。これで再度、精密な型をとり直すのです。下あごの総入歯に、金属床と言って金属製のものを勧めるようならば、その歯科医は推薦しかねます。

通常のレジン床に比べてかなり高価になり、しかし下あごの総入歯を金属でつくるのは技術的にかなり難しいのです。専門家なら、まず引き受けないと言えるでしょう。