入歯づくりの実情

健保で入歯を作りたくないという歯科医が多いのには、もう一つ、健保で入歯があまりにも低く評価されているという所謂直接原因があるのです。

部分入歯の場合では、抜けている歯のはずもバネの数も患者さんで様々な為、示しにくいものがあります。しかし、総入歯で論じるとそれがはっきりするのです。

というのも、健保では総入歯1つが2万3380円。7日間通院して歯科医が受けとる合計額です。これが総入歯1つに対する値段なのです。この価格では、材料費と義歯全体を製作する歯科技工所への支払いでほとんど消えてしまいます。これが実情です。

型をとったり、仕上がった入歯をその患者さんの口に合うように調整したりといった歯科医の労力はほとんどただ働き状態になってしまうと言っても過言ではありません。

その上、この間の歯科衛生士の給料をはじめ、光熱費・診療所の経費がすべて歯科医の持ち出しとなるのです。勿論、頑張って健保でよい入歯を作っている歯科医も全国には大勢います。しかし、このような歯科医院の多くでは、とてもではないが技工所に製作をお願いする事が出来ず、外注する事なく診療の後に深夜までかかって入歯を自分でつくるという事になるのです。

それでも何とか大幅な赤字になる事は避けられているのだが、労働の対価は計算外となってしまっています。このような現状を背景に、健保の入歯は、技術的良心と、社会経済面の矛盾・直接経費の大きなアンバランスが相まって、多くの歯科医から煙たがられしまっているのです。

無人島に一つだけ持っていくとしたら、それは歯ブラシ。≫Top Pageへ